コトラー,アームストロング,恩藏のマーケティング原理の読書メモ.マーケティングの基本を,実例付きでわかりやすく解説してくれる名著.マーケティングとは,意図的に,顧客と良好な関係を築くための手法である.顧客の意識の有り様は,時代の流れに大きく左右されるため,マーケティング理論を常にアップデートし続ける必要がある.

  • p.xiv:マーケティングの5ステップ.
    1. 顧客ニーズの理解.
    2. 顧客主導マーケティング戦略の設定.
    3. マーケティング・プログラムの策定.
    4. 顧客リレーションシップの構築.
    5. 顧客からの価値獲得.
  • p.6:マーケティングの究極の目的は,セリング(売り込み)を不要とすること.顧客と有益な価値交換ができる関係を築くこと.
  • p.7:ニーズとは,人間が本質的に備える性質であり,何かが欠乏している状態.ウォンツとは,ニーズが文化的背景や個人の特徴を通して具現化されたもの.需要とは,ウォンツが購買力を伴ったもの.マーケターが把握すべきなのは,ニーズ.
  • p.10:マーケティング・マネジメントとは,ターゲットとなる市場を選定し,その市場との間に収益性の高い関係を構築する技術および科学.マネジメント設計には5つの志向がある:
    • 生産志向:顧客は価格と手に入り易さを重視するので,経営者は生産と流通の効率化に集中すべき,という考え方.
    • 製品志向:顧客は品質と性能を重視するので,経営者は継続的な性能改善に集中すべき,という考え方.
    • 販売志向:顧客は商品の必要性に気づきにくいため,経営者は大々的な販売活動を行うべき,という考え方.
    • マーケティング志向:顧客満足を提供することが重要なので,経営者は市場のニーズを的確に把握すべき,という考え方.マーケティングの方式として,顧客主導型マーケティングと,顧客誘導型マーケティングがある.
    • ソサイエタル・マーケティング志向: 顧客の短期的な満足だけでなく,長期的な幸福も考慮すべき,という考え方.
  • p.13:マーケティング・ミックスとは,製品(Product),価格(Price),流通(Place),およびプロモーション(Promotion)などのマーケティング実践のために用いる枠組み.4Pとも呼ばれる.
  • p.23:短期的な売上だけでなく,将来的な売上も考慮すべき.カスタマー・エクイティとは,企業が抱える全顧客の生涯価値の総計である.
  • p.37:市場成長率-相対市場シェア・マトリクス.PPM分析とも呼ばれる.スター,問題児,金のなる木,負け犬.
  • p.52SWOT分析.企業の強み(Strength),弱み(Weakness),機会(Opportunity),脅威(Threat)を評価する.
  • p.53マーケティング計画.エグゼクティブ・サマリー,現状分析,脅威と機会の分析,目標と課題,マーケティング戦略,行動プログラム,予算,コントロールをまとめる.
  • p.57マーケティングROIとは,マーケティング投資に対する,マーケティング効果の比率.マーケティングROIの算出は難しい.最近では,マーケティング効果としてカスタマー・エクイティを用いることが増えている.
  • p.70:競合他社への競争戦略として,次の三つがある:コスト・リーダーシップ戦略,差別化戦略,そして集中戦略.
  • p.87:顧客主導型マーケティング戦略の設計ステップとして,市場細分化,ターゲティング,差別化,およびポジショニングがある.
  • p.93:市場細分化のポイント.測定可能性(規模,購買力,特性が評価できること),接近可能性(セグメントに効果的に近づき,製品を提供できること),利益確保可能性(収益性があること).
  • p.98:究極のマイクロマーケティングは,個人マーケティング.以下が参考になる.
  • p.134顧客関係管理(CRM: Customer Relationship Management).顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上を通して,売上の拡大と収益性の向上を目指す経営戦略.
  • p.141:マーケターが最も知りたいのは,マーケティング活動に対して,消費者がどのような反応を示すか.購買行動の刺激-反応モデル(S-Rモデル)では,購買者の特性と意思決定プロセスの解明がポイントとなる.消費者行動理論という枠組みで,体系化されているみたい.以下が参考になる.
  • p.172:製品は,消費財生産財から成る.消費財は,最寄品,買回品,専門品,非探索品から成る.生産財は,材料・部品,資本財,備品・サービスから成る.以下が参考になる.
  • p.182:エビデンス・マネジメント.本来形のないサービスに形を与えることで,顧客に安心感を与えること.
  • p.242:商品価格の平均約20%が輸送や発送にかかる.
  • p.255:グッドバリュー価格設定とは,優れた品質とサービスとの組み合わせに対して,低価格を設定すること.付加価値価格設定とは,付加価値により自社製品を差別化し,高い価格をつけること.
  • p.265:需要の価格弾性力とは,価格の変動によって,ある製品の需要や供給が変化する度合いを示す数値.
  • p.289:AIDA(Attention, Interest, Desire, Action).消費者が商品に接してから購買に至るまでの決定プロセス.以下の記事によると,ほかにも様々なモデルがあるみたい.
  • p.309:広告効果を見積もるのは,とても難しい.
  • p.311:広告の氾濫を改善するために,アドバテイメントや,ブランデッド・エンターテイメントなどが提案されている.アドバテイメントとは,映画やドラマなどの劇中に特定の商品を登場させ,商品の認知度や企業イメージの向上を図ること.ブランデッド・エンタテイメントとは,映画やTV番組,ゲームなどのエンタテイメント・コンテンツと連携したブランド・コミュニケーション.
  • p.357:紙のカタログは,未だに重要.
  • p.374:ソサイエタル・マーケティングでは,顧客の将来のニーズと,企業の現在のニーズを満足するよう行動する.一方,持続可能なマーケティングでは,顧客と企業両方の将来のニーズを満足するよう行動する.
  • p.381コンシューマリズム.消費者運動.
  • p.381:エンバイロンメンタリズム.環境活動.